医療志民の会について
【設立趣旨】
江戸から明治という時代にかけて、今を生きることで、未来を築き上げた日本人たちの大いなる挑戦がありました。人々は、政治文化経済の鎖国を飛び越え、「明治維新」という新たな時代の『物語』を数多く生み出しました。維新において役を演じた人びとの気持ちの根底には、身分差別によって「自己実現」が疎外されていることの不満があり、このシンプルで本質的な思いが、黒船来航という前代未聞の危機と重なり合うことで、社会を根底から変革する歴史の流れを生み出したと言えます。その維新から約150年たった平成の時代。今また歴史は繰り返されるかのごとく、当時の幕藩体制と同様に、既存の社会制度は新たな状況に対応する能力を欠いており、未来への展望を切り拓けないままでいます。
こうした閉塞感の中で、医療に関する領域が特に深刻な状況を抱えています。産婦人科や小児科を担当する医師は激減し、未来を橋渡ししていく命の健全な連なりが危ぶまれています。一方で、勤務医の人たちも科によっては休む暇もなく仕事に追われ、時には患者との揉め事から犯罪者扱いされることも少なくありません。明治維新では「自己“実現”の疎外」が問題の根底にありましたが、平成の時代においては患者にとっても医師にとっても「自己“存在”の否定」という、より根本的な部分がないがしろにされることで、人間の本能とも言うべき「生きる」という基本軸が揺さぶられている状況です。この揺らぎを、明治維新のように社会変革を生み出す力へと繋げていけるかどうかが、次の時代を切り拓く一つの試金石となっています。何故なら、命に直結する医療制度の崩壊は、社会そのものの崩壊を意味するからです。
ニュージーランドでは、1984年以降医療費が抑制され、今では地方の公立病院はほとんど閉鎖され、地域医療は完膚なきまでに叩きのめされました。日本でも現在まで連なる小泉政権による医療費抑制により、公立病院が閉鎖されつつあるのです。これは一時的なものではありません。この根底には日本とニュージーランドに共通する医療費抑制モデルがあり、ニュージーランドの危機は、日本の未来の姿であるといえるのです。
こうした危機的な状況を乗り越えていくには、明治維新における薩長同盟のように、これまで反目しあってきた者同士が大義のために互いに協力し合うことが重要です。医師と患者、行政と市民、大学病院と開業医など、既存の常識や枠組みにとらわれずに、この難題に協働して取り組むことが求められており、それにより医療における「新たなビジョン」を創り出していく必要があります。いつまでも古い世界観に固執し、バラバラで、権益に縛られた自分本位な世界観に囚われているのでは解決は難しいでしょう。
私たちは今まさに「新しい世界」が生まれ出る歴史的転換期に生きています。だからこそ、社会の根幹のひとつといえる医療制度の改革に全力で立ち向かっていかなければなりません。そこで、あらゆる分野の人びと連携することで「医療志民の会」を発足し、人びとが健康に恵まれ、安心して暮らせる医療制度の構築を目指して、社会に情報発信および政策提言していく“開かれた”「場」をつくり出します。この「場」から、時代を変革していくエネルギーが創発され、可能性へと開かれた未来が生み出されていくことを確信します。
基本方針:6つの協働
1)国民と医療提供者の協働:政府の持つ情報の開示を求め、医療政策の検証を可能にするとともに、政策決定過程の透明化と合理化を図る。責任の大きさや難易度を考慮して診療報酬体系を見直す。無駄を排除し、必要な資源を投入する。
2)コミュニティと医療提供者の協働:地域ごとの特性を考慮した医療提供体制を住民と共に構築する(救急、産科救急、小児医療)。
3)患者と医療提供者の協働:患者と医療提供者で情報を共有し、ともに疾病に立ち向かう。徹底した患者理解支援。
4)医療提供者間の協働:病院内でのチーム医療。地域での情報の共有。医療機関の役割分担。医療機関の間での患者に優しい受け渡し。
5)国際社会との協働:新薬・医療機器の開発の円滑化。外国の患者の受け入れ。医師教育への協力。
6)時代との協働:静的な完成型を目指さず、医療内容や提供体制を時代にふさわしいものに常に変革していく。
発起人一同
【理事会】
共同代表 大谷貴子 発起人
佐藤 章 発起人
【事務局】
事務局長 海野信也 発起人
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